答志島架橋に関する一般質問

三重県議会

平成23年12月第3回定例会 12月1日 中村欣一郎県議会議員

18番(中村欣一郎) よろしくお願いいたします。
 次に、2問目をお聞きします。海岸等に漂着するごみのことについてお聞きします。
 鳥羽市の離島で開催されました先日のみえ現場de県議会でも、この漂着ごみの件が複数の島民の声として届けられました。その際、出席されていた議員の皆さんから、その件については中村議員がしっかりやりますのでと私に話を振られたこともありますので、1問目に引き続き、地元の案件で質問をさせていただきます。
 台風一過というと、皆さんはどういったイメージをお持ちでしょうか。一夜明けて雨戸をあけると真っ青に澄み渡る空、すがすがしい空気。一方、離島の台風一過というと、朝から大騒動です。木が倒れたり、ちぎれた木の枝が散乱していたり、どこかの看板やスレートの破片が道路に落ちていたりと、ここまでは皆さんの地域と同じ光景かと思います。ただし、自分たちの仕事の基地である漁港やその周辺の漁場、海岸に大量の流木が押し寄せてくる光景が、最近はずっと増えてきたような気がいたします。
 漁港においては、押し寄せるといっても漂着する浜がありませんから、流木やらアシやヨシ、その他のごみが港の中を埋め尽くすわけです。ちょうど南極観測船が氷に閉じ込められているような様子を想像してみてください。
 (パネルを示す)これがその写真です。平成16年の宮川で大きな災害があったときの翌日の鳥羽市答志島の桃取漁港です。
 この写真は間伐材らしい流木が多く写っていますが、アシやヨシがすき間なく、草木がすき間なく埋まったときにはまるで陸地と見間違えるような感じになりまして、歩いて渡れそうな気がするほどです。
 撤去をするにも作業をするための自分たちの漁船さえ動かせないわけでして、まさに手足を奪われた状態での人海戦術に頼らざるを得ないわけです。気温の高い日中の作業ということが多くあり、高齢者の多くが作業後に体調不良を訴えた年もあったと聞き及んでおります。
 そういう私も、このごみのピークの状態は目にしたことがありません。なぜなら、港には定期船が入ってくることがかなわないからです。
 島の皆さんは文句を言う前に、まず総出で港を使えるように動きます。だれのせいや、かれのせいやと言ってみたところで、だれかが片づけに来てくれるわけではありません。ほうっておいたらほうっておいただけ船が出られない時間が延びる。作業が大変なのはもちろんですが、漁に出られないその間の収入にも影響はあります。
 こんな話もあります。何度も被害に遭っている桃取の漁業者は、流木やごみの港への流入を少しでも食いとめようと涙ぐましい努力をしております。
 大雨が降ってごみが寄せてきそうだと予想されると、宮川の河口に向けて船で走るんだそうです。そして、沖合に流木やらごみが漂流するのを見ると港の仲間に連絡をし、港ではそれを受けて、災害用のフェンス、これを港の入り口に張りめぐらせる。そんな自衛策をとっているんだそうです。
 この写真ですけれども、(パネルを示す)川から、恐らく川からだと思うんですけど、流れてきた流木は、こんな形で固まりになって漂流をしておりまして、もう間もなく、これ、港へ入ろうとしているところで、後から後から順番待ちをしている漂流物があります。
 私は、流木やごみが港を埋め尽くす様子を見たときにも驚きましたけれども、このオイルフェンスを張りめぐらす自助努力を被害者たちが黙々とやっているということに、ごみの量以上に私は心を打たれました。
 そして、その後があります。
 これが、(パネルを示す)その流れ出してくると言われている宮川の河口、左岸の様子です。正面が大湊で右側が宮川の上流に当たります。もしこのまま放置されると、また次の大雨で再び流れ出すおそれがあります。
 国土交通省の管轄ということで、伊勢市内の宮川を管理する事務所に出向き早急な処理をお願いしたところ、地元からも要請があるということで、近いうちに撤去する予定だというふうに言っていました。
 しかし、また驚いたんですけれども、話の中で伊勢湾口の離島では宮川から流れ出た流木等で大雨のたびごとにとても多くの被害が出ているんだということを担当者に話をしたんですけれども、この出先では全く認識されておらず初耳だということを聞きまして、私はその場にへたり込んでしまいそうなぐらいがっかりをしました。
 この人たちにしてこんなレベルなのかなと思いました。一たん川から出たらこんなものかな、一体県が今やっている調査はどこまで当てにできるのかなと。国と県、国は三重国道河川事務所ですけれども、一体連携などとっているのかいなとそのとき思いました。
 鳥羽市の港の中でも、伊勢湾の内側に面していて最も被害の顕著な桃取港を紹介させていただきましたけれども、このように頻繁に漂着する海岸もあれば、また、風向きや潮の流れによりますけれども、量の多い少ないはありますが、鳥羽市の海岸にはほとんどこのように漂着物が散乱をしております。
 随分と自分の感想も込めましたけれども、このような現状に、担当部としてはどのようにお考えでしょうか。
   〔辰己清和環境森林部長登壇〕

◎環境森林部長(辰己清和) 海岸漂着物のことでございますが、これにつきましては、県としては平成21年度から22年度にかけまして、県内の93海岸の概況調査、これを行うとともに、伊勢湾内の14海岸、それと21河川の詳細調査を実施したところでございます。
 その結果、議員御指摘のとおり、鳥羽市の答志島の奈佐の浜には、調査いたしますと、伊勢湾岸の平均の25倍の量が平常時でも集まってくるという実態をつかんでございます。
 それで、先ほど写真で見せていただきましたように、豪雨時には流木による被害を受けやすく、漁業に与える影響が及んでおりますし、離島であることから回収した漂着物の処理も大きな負担となっているということを承知してございます。
 それで、私どもの考えということなのですが、まず一つは森林問題だと思います。豪雨時には山腹崩壊などに伴いまして、倒木とともに間伐材を流出するということがあることから、渓流沿い等の場所に伐採木や枝などを放置しないように、森林組合、あるいは林業事業者などに注意を促しておるところなのですが、今回の台風12号、紀伊半島大水害では、流木が河川にはんらんし、海岸へ漂着しているということから、河川への間伐材の流出状況等を調査して、間伐施業のあり方を改めて検討していくこととしてございますし、私といたしましても、災害に強い森づくりや、間伐材ができるだけ排出されないような方策をしっかりと考えていかなければならないというふうに思っております。
 それと、災害時を除く平常時の漂着物対策と、海岸漂着物対策ということで、国のほうでも平成21年に海岸漂着物処理推進法というのができまして、これは既に施行されておるわけでございますが、県のほうで現在策定中の三重県海岸漂着物対策推進計画、これにおきましてその対策を検討しているところでございます。
 こうしたごみの発生要因が、主に内陸部の小河川あるいは道路側溝等に捨てられたもの、こういう部分のところが推進計画の分でございますが、大きな河川を経由して先ほどの写真のように流出してくるというようなことがあることから、その対策は、発生源に近い身近な場所で、ごみの散乱防止や河川等の清掃が重要になってくるというふうに考えてございます。
 推進計画をつくるに当たりましては、協議会という格好で、河川あるいは海岸の管理者、それから、そういう行政側と、市町、それからNPOの方々等も参画して、今、計画づくりを進めておるところでございまして、国の国土交通省の関係者も参画いただいていますので、そういう部分については、担当者がどうかわかりませんが、皆さんここについては了知していただいているのではないかなというように思っておるところでございます。
   〔18
番 中村欣一郎議員登壇〕

18番(中村欣一郎) 写真のほうを、たまたま漁業者を例にとって例示させてもらいましたけれども、部長は元観光局長でもございますので、観光面でもこのごみの問題は非常に大きな問題で影響があろうかと思いますので、その辺にも私は期待をしておりますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。
 先ほど説明にありました発生抑制ということについてですけれども、私も先ほど言われました海岸漂着物対策の地域ワークショップのほうに昨年からたまたま参加しておりまして、それは最も末端の会議ですので大きな流れとしてはよく把握はしておりませんけれども、どうも1年やってきて、発生抑制の具体例のところに来たところで、これもまた委員会がストップしてきたような、スピードが落ちてきたような気がいたしますので、多分、大変なハードルというか、案件があって進みにくいのだとは思いますけれども、きっちりと進めていただきたいというふうに思っております。
 それと、発生抑制については三重県だけで解決する問題では到底ありませんので、伊勢湾に面した愛知県、名古屋市、そして、河川を通じてかかわりのある岐阜県と一緒になって進めていかないと、当然効果はないものと思います。
 けんかをする必要はないのですけれども、2県1市ともしっかり物を申してやっていただきたいと思いますけれども、その辺の決意のほどもお聞かせください。

◎環境森林部長(辰己清和) 広域的な部分で伊勢湾というのは3県1市が関係してございまして、私ども、「伊勢湾 森・川・海のクリーンアップ大作戦」というのを県から呼びかけてやっておるわけでございますが、今年は54団体が出ていただいて、これが三重県だけではなしに3県1市で共同してやっておりますし、それから、また、3県1市で啓発用のパネルもつくりまして、三重県では各市町へ巡回展示をさせていただいてます。
 それから、今後でございますが、今年中にこういった実態を訴えるために、愛知県、岐阜県の方々にも知っていただきたいと、この実情を知っていただきたいということで、ちょうど計画もできてまいりますので、シンポジウムを名古屋市で開催して、ぜひその実情を皆さんに認識していただきたいと思っています。
 それと、これが広域的な発生対策ということになりますと、やっぱり行政側も、国、国土交通省、それから環境省などの関係機関の協力も必要だというふうに考えておりまして、伊勢湾再生推進会議というのが、3県1市と、それから国土交通省、環境省の関係機関で構成してございまして、この中で海岸漂着物の具体的な対策を検討協議する体制づくりというものをしっかりとつくっていただくように働きかけていきたいと、このように考えてございます。
   〔18
番 中村欣一郎議員登壇〕

18番(中村欣一郎) 以前は公害というと加害者が1者で被害者が多数という構図があったかと思うんですけども、このごみの問題とか、加害者が自分も含めて多数、そして、被害者が少数という、こういう被害が多くなってきた社会に変わりつつあるというふうな話を聞いたことがあります。
 まさしくこの漂着ごみの件が、加害者が多数で、生活者みんなが多数で、ですから、生活者みんなで責任を負うべき社会問題であるというふうに思います。
 鳥羽市民がごみを捨てないかというとそんなことはありませんでして、漁業者もまたしかりです。ですので、鳥羽の人もみんなごみの発生者なわけでして、一方的に被害者だなどと言うつもりは全くありません。
 くどいようですが、社会を構成するみんなが加害者であるという観点で発生抑制の施策を進めていただきますようにお願いいたしたいと思います。
 以上でこの質問は終わります。
 最後に離島架橋についてですが、具体的には答志島架橋についてでございます。
 御承知のとおり、県内六つの有人離島の中で、人口、面積ともに最大の答志島でありますが、島内には答志町、和具浦、桃取町の三つの集落があり、鳥羽市人口の12%に当たる約2600人が暮らしております。
 先日、答志島において、みえ現場de県議会を開催いただき、正副議長はじめ同僚議員の皆様にも足を運んでいただきました。
 また、知事におかれましても選挙の折に訪れていただいており、この島の風光明媚な自然やタイムスリップしたかのような路地裏の風景、活気ある島民の姿など、魅力にあふれた島であるということは、皆さんよく御認識されていると思います。
 先日のみえ現場de県議会では、島のよさを一層引き立てるすばらしい小春日和に恵まれたわけですけれども、島で365日生活をしている島民からすれば、しけなどにより一歩も島から動けないという日も年間を通じて数日あるわけです。
 ですので、私は、あのみえ現場de県議会の日もできれば大しけで、辛うじて船が出るような天候で、先輩議員の皆様にもぜひ島民の苦労を体感していただければより一層島の皆さんの架橋建設に対する思いに寄り添っていただけたのではないかなと思った次第です。
 そして、答志島架橋について質問させていただくに当たり、このことについて政治生命をかけたと言っても過言ではないくらい島民の熱い思いをこの議場で訴えていただいた答志島出身の故中村勝前県議に対し、哀悼の意を表したいと思います。
 平成22年6月14日の中村勝前県議の最後の一般質問では、このように発言をされております。「答志島架橋について、三重県民である答志島のほとんどの住民が架橋に対する署名をし、地元市民、地元住民団体が架橋を熱望し、地元市議会が早期実現を求め、地元市長が積極的な発言をし、県議会が早期実現を求めているのに、知事だけがはっきりしないわけであります。」、途中を略します、「再度知事にその決断をいただく日が近いうちに私は来るだろうと、こんなふうに思っておりますけれども、私もいつまでも待てないんです。」、この言葉を残し、志半ばにして旅立たれました。
 私は、この中村先輩の熱意と島民の切実な願いを胸に、改めて知事に御質問させていただきたいと思います。
 さきの東日本大震災のときの津波の影響は、遠くこの答志島にも及んでおり、市営定期船、市営定期航路は3日間にわたって欠航となり、孤立してしまいました。
 島内には当然大きなスーパーなどはなく、小さい食料品店の在庫は底をつきはじめ、本土では考えられない不安な日々を送ったと聞いております。
 これは津波だけではなく、今年は台風2号、6号、12号、15号においても市営定期船は全日欠航となっており、食料の確保もさることながら、このようなときに救急患者が発生することも十分考えられます。
 橋さえあれば、2600人の県民がこのような不安な日々を送ることもなく、救急搬送も円滑に行え、また、島の活魚、鮮魚の流通においても大きく活性化するものと考えます。
 答志島架橋建設協議会をはじめとする地元団体、鳥羽市民が早期実現を熱望し、鳥羽市議会、三重県議会が全会一致で採択している答志島架橋の早期実現について、知事のお考えをお聞きします。
   〔鈴木英敬知事登壇〕

◎知事(鈴木英敬) 離島架橋についての御質問に答弁させていただきます。
 離島架橋については、船舶に頼らない陸上交通を確保し、島の産業や生活圏の広域化を促すとともに、住民の命と生活を守るライフラインとしての役割を果たすものと認識しています。また、平成2110月の県議会において離島架橋の早期実現に関する請願が採択されたことについて、さらには離島架橋に対する島民の方々の熱い思いについても十分理解をしております。
 こうしたことから、離島架橋をはじめ、離島地域の振興策については、鳥羽市及び志摩市とともに既に架橋した地域の調査をするなど、架橋が地域に与える様々な効果や影響について検討を行っているところであります。
 離島架橋の整備には、調査事例によりますと、地理的条件や工法によって幅がありますが、110億円から500億円程度の経費を要します。このため、厳しい財政状況の中、国の支援が必要不可欠であるとともに、離島及び離島以外の地域を含め、多くの県民の方々の理解を得ていく必要があると考えております。今後も引き続き、国の動向や他県の事例などの情報収集に努めるとともに、関係する両市との連携のもと、離島架橋に当たっての課題などを整理し、取組方法等について検討を進めてまいります。
 今年度は、下関、呉、そういうところに行きまして、住民の方々も対象としてヒアリング調査をして、プラスマイナスいろんな御意見があります、そういうような本当の生の声を聞きながら、現在いろいろ課題などを整理し、検討を進めているところであります。
   〔18
番 中村欣一郎議員登壇〕

18番(中村欣一郎) 3月22日の知事のブログを紹介させていただきます。
 答志島に行ったときの話ですけれども、「そんな中、やはり救急医療についての島民のみなさんの不安から、答志島架橋の設立を望む声が出ています。協議会を設立し、県に要望にいったら、『県民の総意を踏まえて判断する』と言われたそうです。この答え、『ん?』と思いませんか?離島の橋のこと、県民の総意を聞いたら、なんであそこだけと反対する人がいるに決まっているではないですか。ということはやらないということですよね。この対応により、大変県に対して失望されている方が多かったです。」と知事は述べられております。
 この言葉に代表されるように、島民の方にもお話を聞いたんですけれども、この知事ならやってくれそうだと、この知事のうちに何とかせんと一生かからんという印象を持っている方が本当に随分おります。ぜひその声にこたえていただくように私からもお願いをいたしまして質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)


 

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