答志島架橋に関する一般質問

三重県議会

「平成21年12月」第2回定例会 12月3日 中村勝県議会議員


中村勝県議会議員
新政みえ、鳥羽市選出の中村勝でございます。議長のお許しをいただきましたので、早速、通告に従い、質問に入らせていただきます。
 10月議会におきまして、離島架橋の早期実現についての請願が全会一致で採択をいただきました。改めて同僚議員の皆さんに心からお礼を申し上げます。ありがとうございます。今日は傍聴席が満席であります。請願の提出者であります答志島架橋建設促進協議会の皆さんが、朝、始発の定期船に乗って海を越えてやってきました。これだけの離島の人たちが県議会へやってきたのは初めてではないかと思います。
 離島振興の父と言われました民族学者の宮本常一先生が、昭和28年12月、全国離島振興協議会の機関紙である「しま」の創刊号に、離島の存在を忘れられた社会から国民全体に意識せられる社会に立ち戻ることによって、島々はその後進性をぬぐい去ることが可能となると述べています。県政史上におきましても忘れられた三重の島々が、県民全体に意識せられる県政に立ち戻ることによって、島々はその後進性をぬぐい去ることが可能となると考えています。その離島の存在を県民全体に意識していただくために、今日は答志島から万感の思いを込めてやってきているのだということを初めに御披露申し上げておきたいと思います。
 私は、10月20日の採択に先立ち、賛成討論に立ちました。訴えさせていただいたのは、離島住民の命の格差であります。一刻を争う救急時に船で海を越えなければならないことを今年起こりました二つの事例をもとに訴えさせていただきました。それは、島民だけではなく、神島の事例のように、たまたま訪れた観光客なども同じ立場になることがあるということも申し上げました。本土へ引っ越せばよいという意見に対して、三宅島や旧山古志村住民の思いを例に、生まれ育ったふるさとは何物にもかえがたい、かけがえのないところであることを訴えさせていただきました。
 また、離島架橋とかかわって、伊勢湾口道路構想が国土形成計画全国計画や中部圏広域地方計画に大きく後退をしたこと、長崎県などでは24本もの離島架橋が完成していることなどを述べ、離島住民もまた三重県民であることから、答志島架橋の早期実現を強く訴えさせていただいたところであります。
 そこで、まず、架橋請願が全会一致で採択されましたことに対して、私の賛成討論も含めて、知事の受けとめ方をお聞きしたいと思います。
 また、本年3月16日に、答志島架橋建設促進協議会が知事にお会いして、架橋建設の要望を行いました。そのときの知事の答えが、国土形成計画が閣議決定され、この夏には中部圏広域計画が策定をされる。架橋には膨大な費用が必要で、県民の理解が必要である。中部の計画を見て、県として検討をしていくというお答えでした。その国土形成計画全国計画では、一般論として、湾口部、海峡部とを連絡するプロジェクトについては長期的視点から取り組むとされ、この夏の中部圏広域地方計画では、さらにあいまいもことした表現で、その記述からは伊勢湾口道路を読み取ることは不可能になっています。
 そこで、今回の国土形成計画の全国計画及び中部圏広域地方計画における伊勢湾口道路の位置づけについて、知事の受けとめ方と中部圏広域地方計画を見て、答志島架橋をどう検討されたのか、また検討されるのかについてお聞かせをいただきたいと思います。
 伊勢湾口道路は、国の産業、経済、流通の大動脈であり、一方の離島架橋は、離島住民の命の格差、隔絶性を解消する24時間陸上交通を確保するという、国民の生活が第一の生活道路であります。この全く趣旨が異なる二つの事業を同一視してきたことが今日的閉塞感を生んでいると考えます。
 そこで、答志島架橋を離島架橋として明確に位置づけるべきであると考えますが、知事の所見をお伺いします。
 次に、請願採択を踏まえて、ぜひとも答志島架橋をこれまでの長期的課題という答弁から、具体的に前へ転がしていただきたい。それが今日質問の本旨であり、傍聴に来ている皆さんの全員の思いであります。
 そこで、答志島架橋について新年度予算に調査費を計上することが次の段階へ入る第一歩だと考えますが、知事の考えをお聞かせください。
 よろしくお願いします。


野呂昭彦知事
 離島架橋についてでございますけれども、離島そのものにつきましては、豊かな水産資源と観光資源に恵まれ、さらに、離島固有の資源を有しておりますことから、県としては、これらの資源を最大限活用し、各島それぞれの魅力を生かして自立的発展できる地域の実現を目指して、関係市と連携して離島振興策に取り組んできておるところでございます。
 こういう中で、現在、離島と本土を結ぶ唯一の交通手段は海上交通でございますので、県としては、離島航路整備事業補助金によりまして定期船の安定的な運航を支援いたしますとともに、平成19年度と20年度におきましては、鳥羽市が行いました高速船の整備について支援を行ったところでございます。
 離島架橋につきましては、船舶に頼らない陸上交通を確保し、島の産業や生活圏の広域化を促しますとともに、住民の生命、生活を守るライフラインとしても役割を果たすものと理解をいたしております。
 また、離島架橋への島民の方々の思い、今日も本当にたくさんの傍聴のほうにお越しである島民の皆さんの思いとか、それから、離島架橋の早期実現に関する請願が県議会で採択をされたということにつきましては、十分認識をしておるところでございます。
 しかしながら、離島架橋につきましては、その整備に多大な経費を要することでございますから、県民の理解はもとよりでございますけれども、国からの補助金などの支援に頼らざるを得ませんけれども、民主党の新しい政権におきまして、こうしたプロジェクトに対してどれだけ重要視し、優先度をもって取り組んでいくのかというような見通しは立ちにくい情勢にございますから、今後、動向を見きわめていかなければならないと考えております。
 また、自然環境への影響や、離島だけでなく、離島以外の地域を含め、影響を受ける多くの関係者の方々の理解、合意形成など様々な課題につきまして、関係市と連携をいたしまして、幅広く検討をしていく必要があると考えております。
 そして、伊勢湾口道路と切り離して、明確に離島架橋を位置づけたらどうかということについてでありますけど、離島架橋につきましては、伊勢湾口道路構想とも密接に関係いたしてきました。これまで伊勢湾口道路の実現に向けた国土形成計画への位置づけへの働きかけなどを行う中で取り組んできたという経緯がございます。
 国土形成計画につきましては、平成20年7月4日に全国計画が閣議決定をされまして、その中で、湾口部、海峡部等を連絡するプロジェクトにつきましては、長期的な視点から取り組むとして、それまでの全国総合開発計画と比べると後退した内容になっておるところであります。また、平成21年8月4日に決定をされました中部圏広域地方計画の中におきましては、環伊勢湾地域において、自立性の高い都市圏が重層的に連なる、より魅力的な広域交流圏を目指し、多様なネットワークの形成による湾岸地域相互、湾岸地域と周辺地域の交流連携機能の強化を図ると、こういうふうに記載されておりまして、伊勢湾口道路の直接の記載はございませんけれども、一定の位置づけがなされたものと考えております。
 なお、全国の他の五つの海峡横断プロジェクトにつきましても、各圏域の広域地方計画におきまして、直接的な記載をするのではなく、多様なネットワークの形成、交流連携機能の強化、こういった視点で取りまとめられておるところでございます。
 県としての考えでありますが、引き続き国家的プロジェクトであります伊勢湾口道路の実現に向けて取り組みますとともに、答志島への架橋についても、離島地域全体の振興を目指す中で、国の動向や方針についての情報を収集いたしますとともに、伊勢湾口道路との関係も含め、取組方法等について関係市と連携して検討をしていきたいと、このように考えておるところでございます。

山口和夫政策部理事
 私からは、今後の取組等につきまして御答弁申し上げます。
 今回、離島架橋の早期実現に関する請願が採択されましたことを踏まえまして、離島架橋をはじめとする様々な離島振興に関する課題につきまして、県と離島を有する鳥羽市、志摩市と検討していく場として、離島振興担当課長会議を設置いたしました。この離島振興担当課長会議では、県から両市に対しまして、離島架橋の早期実現に関する請願が採択されました経緯等を説明いたしますとともに、離島架橋への取組状況等について意見交換を行いました。
 今後、実務担当者によるワーキンググループを設置し、離島架橋への取組方法などについて検討していくことで合意したところであります。
 離島架橋の実現に向けましては、様々な課題につきまして幅広い視点から検討していく必要があることから、まずはこの離島振興担当課長会議やワーキンググループを活用しながら、関係市と連携して国の動向や方針につきましての情報を収集いたしますとともに、今後の取組方法等について検討を重ねていきたいと考えております。
 以上でございます。

中村勝県議会議員
 ありがとうございました。
 請願が採択をされて、これまでと違って、伊勢湾口道路と切り離して、いわゆる生活道路としての答志島架橋を離島架橋として明確に位置づけをしていただきたいということを申し上げたんですが、知事のほうからは、まだ伊勢湾口道路も含めて検討していくという、そういうお答えだったというふうに思うんですが、ぜひ、伊勢湾口道路と答志島架橋、これは、先ほど言いましたように全く目的が違う橋でありますので、ぜひそのことを御理解いただきたいし、私も、長崎県の伊万里湾にある鷹島というところが、今年4月に橋が開通をしましたけども、そこでありますとか、和歌山県串本の大島、それから、気仙沼の、これも大島ですけども、そこへも行かせていただきましたし、日本離島センターに何回も行かせていただいて、そしてまた、離島振興について大変一生懸命頑張っていただいております農水省の山田正彦副大臣にもお会いさせていただいて、今の状況なり、そして、国に対して、政権はかわりましたけれども、確かに今の予算、20%程度一括して離島振興の予算は削られておりますけれども、今後、やっぱり生活が第一のそういった架橋について、我々としてもしっかり要請をさせてもらいたいと思いますし、そういったところでいろいろ調査なり、お教えをいただいた中で、知事の思い一つで実現をするというのが、私はいろいろ回らせていただいた結論であります。担当者会議を設置いただいて、それから、ワーキング等でもこれからいろいろ検討いただくということなんですが、ぜひ知事に、伊勢湾口道路は、私は何も反対でもありませんし、ぜひこれをかけていただければ、三重県の南北格差の問題なんていうのはすぐに吹っ飛ぶとは思いますけども、それはなかなか難しいので、とりあえず皆さんがしっかり今離島の中、答志島の中で生活をしておるうちに橋をかけていただきたい。ということで、再度知事にその辺の決意についてお聞かせ願いたいと思います。

野呂昭彦知事
 まず、離島とか、過疎等の問題の振興策について、新政権においては、私は決して冷たく扱うということはないと思っておりますが、一方で、コンクリートから人へというような言葉があるように、かなりハードということについては抑制がかかるかもしれない。そこら辺も実はよく見ていかないと、実はこれまで確かにできてきておる橋等、これは継続事業でやっていくんだというものと違って、新規にということになりますと、非常に莫大なお金がかかってきますから、そういう意味での国の状況等もしっかり見ていかなきゃいけないと、こういうふうに思います。
 そういう意味では、いわゆる湾口道路というのは、これまで国家的プロジェクトみたいな位置づけの中から来ておったことでありますから、そういう意味で、これまで長い間、地元からの、あるいは三重県全体からの期待がかかっておったところがあったのかなと思います。しかし、状況もいろいろ、様々変化をしてきておるところでありますから、さっきからお話の出ております離島振興の担当課長会議でも、この話を議論しようということにしておりますし、ワーキンググループもございますから、そういう中でしっかり議論をし、一方では、国等の情勢、情報をしっかり収集しながら、県として取組方法について検討を重ねていきたいと、こう思っております。

中村勝県議会議員
私は、もう少し踏み込んだ答弁をいただけるかなというふうに期待をして、今日はやってまいりました。あと、ほかの項目の質問もあるんですが、これ、時間配分を考えるとなかなか難しいなとは思うんですけども、三重県には有人離島が六つありますけれども、その中で、ほかの離島は本当に人口も減って高齢化も進み、大変な状況になっております。答志島もそういう傾向でありますけれども、まだ今、漁業も、後ほど紹介もさせていただきますけども、天皇杯をいただくような若い人たちが残り、頑張っておるわけでありまして、その辺の島民の思いというのをぜひとも知事として受けとめていただきたい。本当に知事次第やと。鷹島の宮本前町長にもお会いさせてもらいましたけども、知事の顔を見たら、見たときはいつも走って言え、知事がうんと言ったら、それでかかるんやと、こういう教えをいただいてきていますので、ぜひそのことを強く、これからも私、精いっぱいやらせていただきますので、御理解をいただきたいなというふうに思います。

 

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